2000 年 3 月の高原日記




2000-03-01(水)    快晴   ヒュッテ   L = -15°C, H = -1°C

早いものである。
・・・・もう、今日から三月である。

今日は、午前中小海分院に行き、夕方、佐久市の宮尾さんとハーモナイズで会った。
話しの内容は、主として福祉作業所の話し。
・・・・その後で、きのう佐久市の喫茶店「白樺」の直子さんから、宮尾さんが早稲田大学でロシア語を勉強した・・・・と言う話しを思い出したので、ロシア語で話し掛けたら、宮尾さんは、とてもビックリ
 「まさか、こんな所でロシア語を聞くとは思いませんでしたよ・・・・」
との事。
 ・・・・今度チャンスがあったら、ロシア語の会話の練習をしましょう・・・・と言う話しを最後に、「ダ・スヴィダーニャ」(サヨウナラ)となった。
・・・・世の中とは不思議なものである。

午後 8 時半。
大畑の森下さん宅に 20 分程お邪魔して、ラジコンの飛行機を見せて貰った。
森下さんの部屋は、天井も床も飛行機だらけ・・・・
・・・・中に一台、大破した飛行機があったので
 「この飛行機、どうしたの?」
と聞いたら
 「この飛行機は、つい最近、出来たばかりの飛行機なんだけど・・・・出来上がったトタンに、どうしても飛ばしたくなって、あせって飛ばしたら、わずか 8 秒で墜落、マッサラの飛行機が大破しちゃったんですよ」
・・・・と言う話し。
とにかく・・・・時間とお金の掛かる趣味である。

まったく・・・・ギョ、ギョ、ギョのギョッ・・・・である。

   

   
2000-03-03(金)    晴     ヒュッテ     L = -8°C, H = 6°C

 案内所の前の側溝の中が凍結して詰まったらしく、日中、上の方から流れてきた雪解け水が案内所の前で溢れだし、それが夜になって凍結するものだから、前の道路から玄関の入り口にかけて氷だらけになってしまった。

 観光客が滑って怪我でもしたらいけないと、先週、ヒュッテから鶴嘴を持って行き、氷を全部打ち割ってみたが、割ったトタン側溝の中から物凄い勢いで雪溶け水が噴き出し、前よりもっとひどくなったので、これ以上、いじるのを止める事にした。

 今日、宮本屋の久紀さんが、玄関前の氷を調べに来て
 「ウワーこりゃあ、駄目ですよ。今年、冬が来るまえに人足で側溝の中を掃除しますから・・・・」
との事。  氷が玄関のドアーまで来なければいいんだけど・・・・

  
 午後、右下の奥歯が、物凄く痛みだした。
 痛み始めたのは、昨日の午後の事。
 (いやあ、何とかなるだろう)
 と、たかをくくっていたら、この有様である。
 ・・・・早速、電話を掛けて、歯医者さんに出掛けたが、治療椅子に横になった頃は、ホントにもう舌を悪い歯に載せただけでも、ズキーンと痛むような有様。

 先生が見て下さり、ゴリゴリガリガリと歯に穴を開けて治療を下さったら、間もなくウソの様に痛みがなくなったのには、ホントにビックリ・・・・!
 ・・・子供じゃないけれど、嬉しくなって
 「ウワーイ!!」
 と叫び出したくなるような、気さえした。
 渡辺先生、どうも有り難うございました。

 ・・・・それにしても、今日が土曜日じゃなくて、ホントによかったと思う。
 これが、明日の土曜日だったら・・・・ホントに、もう、気が狂っちゃったかも知れない。
  (あとで分かった事ですが、渡辺歯科は土曜日も診て下さるんですって・・・後日、記入)

 だって、ウイークエンドは歯医者さんはお休みなんだもの・・・・!!

   

   
2000-03-04(土)  雨    ヒュッテ    L = -4°C,  H = 8°C

暖い一日。
正午から、ずっと雨が降っている。

  Pluvas kaj pluvas kaj pluvas kaj pluvas,............

観光案内所の窓から、雨に煙ぶる松原湖を眺めながら、大好きなザメンホフの詩を口ずさむ。

  雨が降る、雨が降る、雨が降る、雨が降る・・・・

雨は美しい。
・・・・僕の心をしっとりと柔らかく湿めらせて、暖く解きほぐして呉れるから・・・・

・・・・でも・・・・
余りに淋しくて、幸せで、哀しくて、満ち足りて・・・・
複雑な想いに駆られて、大きく息を吐いたら、
窓ガラスが曇り、湖がボンヤリと霞んでしまった。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・嗚呼!!!

  
とても、静かな午後。
・・・・久方振りに、ユックリと本を読んでいる。
どうして、こんなに落ち着いていられるのかと思ったら、
午前中に、2 週間ほど前に「小海塾」で頼まれた原稿を書き終わっていたかららしい・・・・

    題名:P物語
    副題:山あいの小さな町の嘘のようなホントの話

今の僕には、こんな事ぐらいしか、筆にすることは出来ない。

これで、駄目だったら、ほかの誰かが筆をとって呉れるだろう・・・・
・・・・兎に角、僕は僕なりに、一生懸命努力したのだから・・・・!!!

  

午後 10 時。
昼間、降りだした雨は夜になった今でも、雪に変わらずに、まだ降り続いている。
・・・・暖い夜。
何か、ゆるゆるとした春の宵のような気がする。
・・・・
さあ・・・・今夜は
お風呂が湧いたら、ユックリと浸(つ)かって、
伸び伸びと寝ることにしよう!
・・・・・・・
そんな事を考えていたら
部屋の中の灯も、何んとなく眠そうな事に気が付いた・・・・

   

   
2000-03-05(日)   曇り     ヒュッテ     L = -1°C, H = 7°C

暖い一日。

本当に何年か振りに、エスペラント語の独習書を開いてみた。
ずっと前に勉強したことは、殆ど忘れてしまっていたけれど、
よんで行くと、どんどんと思いだしてくる。

エスペラント語は僕の一番好きな言葉!

将来、喫茶店でも開く事があったら、店の名前をエスペラント語でつけようかと思う。

   Esperanto とか
   Pluvo とか
   Revo とか・・・・・
   それとも Polusa Stelo がいいかなあ・・・・

そして、店の中には、大好きな詩の美しい木彫りの板を飾ろうか・・・・と思う。

   Pluvas kaj pluvas kaj pluvas kaj pluvas
   Senc^ese, senfine, senhalte
   El c^iel' al la ter' el c^iel' al la ter'
   Are gutoj frapig^as resalte.

   ・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・

そしたら、どんなに素敵だろう・・・・・と思う!

  

   
2000-03-06(月)    晴     ヒュッテ     L = -7°C,    H = 5°C

午後 2 時。
役場保健婦の菊池さん、篠原さん、作業所の宮下さんの女性 3 人が知的障害者の子供達の事を話しにヒュッテにやって来た。

先週の水曜日、ハーモナイズで話をした宮尾さんから、僕の事をいろいろと聞いたからだと言う。

勿論、僕は喜んで話しをしたが、僕が彼女達に話した内容はおおよそ次のようなものである。

  ●知的障害者や老人福祉などの対応を忘れた町興しは、本当の意味の町興しではない。  
  ●親はどのように子供達に生きていって欲しいのか・・・に就いてもっと話しあいをする
   必要があるのでは?
  ●親は子供達の事を、人まかせにしないで、もっと自分達が出来る事をすべきではないのか?
  ●親は、子供達の能力を伸ばすことアキラメてしまっているのではないだろうか?
  ●外部の仕事を引き受ける場合は、時間が無くて、その仕事に追い回されるのは考えもの。

などなど・・・・について二時間ほど話しあった。

彼女達三人も、よく考え、よく話してくれ・・・・有意義で楽しいひと時を過ごす事が出来たのではないかと思う。

   
午後 4 時過ぎ、彼女達が帰った後、ガラス戸越しに外を眺めたら、庭の白樺の木の向こうに、美しい雲が見えた。
・・・・ずっと眺めていたら・・・・ずっと、ずっと、昔の事だが、この雲と同じような雲を見た事があった事を思いだした。

  
・・・・兎に角、とても美しい雲だった。

   

   
2000-03-08(水)   晴のち雪     ヒュッテ    L = -9°C,   H = -1°C

午後、歯医者さんに行く。
治療が終った後で、先生に
 「こんどの日曜日から 5 日ほど東京に帰るんですけど・・・・」
 と、言うと、先生は
 「それまでに、もう一度診ますから大丈夫でしょう・・・・」
 と言って下さった。
 「・・・・とに角、この間は物凄く痛かったので、急に駆け込んだものですから・・・」
 心配な気持ちを口に出して言うと・・・・
 「ええ、ちょっと、骨が病気に罹ってますから・・・・」
 と言ったあと
 「・・・・でも、大丈夫です。・・・・心配いりません・・・・」
 と仰言って下さった。
 優しい先生である。

 そのあとで・・・・会計の為、受付に戻ると、スラッとした綺麗な看護婦さんがいた。
 ・・・・前から、チョット気になっていた人である。
 ふと、茶目っ気が起きて、小さな声で彼女に言った。
 「ねえねえ、A子ちゃまって、どういう字を書くの?」
 「えーっ、どうして知ってるの?」
 彼女は驚いて、僕の顔を見つめた。
 「アハハハハ・・・聞いちゃったの!」
 「誰から?」
 瞬間、(教えないっ!)て口から出そうになったけど、悪いからヤメタ。
 「八那池の女性から・・・・」
 「誰あれ、それ・・・?」
 「小池さんだよ・・・・」
 と言ったら、すかさず
 「和枝ちゃん・・・」と聞いて来た。
 「和枝ちゃんって、あのヴァイオリンの・・・・?」
 「うん、そう・・・」
 「違う。あの人じゃないよ・・・・」
 「あら、じゃあ、誰かしら?」と言って、彼女は爽やかに首を傾しげた。
 ・・・・彼女が、分からないのは当たり前である。
 だって、八那池の部落には、100 軒ほどの家があるが、その中の八割近くが小池姓を名乗っているからである。
 僕は、意地悪をするのを止めて素直に言った。
 「あの、小池節子さんだよ・・・・」
 「あら、節子さん?・・・・知ってる、知ってる・・・・節子さん知ってるの?」
 「うん、しってるよ。同じクラブで卓球をやっているから。・・・・ホントの事言うとねえ、ゆうべ一緒に卓球の練習やったんだよね・・・・」
 「それで・・・・?」
 「うん、練習の合間に、小池さんに・・・・僕が ”歯医者さんに行ってるよ”って、ここの歯医者さんの事を言ったら・・・・彼女が ”背が高くて綺麗な看護婦さんがいるでしょ・・・・”って言うから、”うん、いるよ。彼女の名前は何んというの?”ってきいたら、”聞きたい?”って節子さんが言ったんだよね。・・・・そこで、”うん、聞きたい!”っていったら、節子さんが貴女の名前を教えて呉れたんだよ・・・・」

 (・・・・実を言うと、そのあと節子さんから、
 「八岳さんの好きなタイプ・・・・?」
 って、問い詰められたが、その事には触れないでおく事にした。・・・・・・・)

 「あら、そうなの・・・・」
 と言って彼女は笑った。・・・・爽やかな笑いである。

 「アハハハハハ・・・・じゃあ、又ねっ・・・・!」

 そう言ってから、外に出ると、僕は八千穂村のハーモナイズに向かった。

 ハーモナイズの大きな窓から見える八ヶ岳の遠景と、大好きなミルクティーをユックリと楽しみながら、爽やかなエスペラント語の勉強をしたいと思ったからである。

   
 真夜中。
 一日が終り、ベッドに潜り込むと、手足を思いっ切り伸ばしてから、僕は心の中でボソッと呟いた。
 (今日も、素敵な一日だったなあ・・・・)

 でも、その後で
 (そう言えば、今日、歯医者さんで先生が ”チョット骨が病気に罹ってますから”・・・・と言ってたけど、あれは、何んの事だったんだろう・・・・?)
 と考えたが、
 (今、ここで考えたって分かる訳はないよ・・・・不安だったら、今度、先生に診てもらうときにでも、聞いてみようじゃん・・・・)
 そう、思ったら、あっと言う間に眠ってしまった。

   

   
2000-03-10(金)  晴     ヒュッテ

午後、歯医者さん行き。
治療が終ったあとで、先生に、
「この間、先生が仰言ってた ”骨の病気って何んですか?”」って聞いたら
先生は、大きな歯の断面図と僕のレントゲン写真とを見せて下さって、今の僕の歯の状態を細かく分かりやすく説明して下さった。

要約すると、ブリッジを支えている歯の一本が虫歯となっているため、現在治療中のもう一本の歯に色々な負担が掛かり、歯の神経が化膿すると同時に歯の根っ子の部分も炎症を起こしており、歯を支えている骨の部分との間に炎症が起きている・・・・という事らしい。
 「特に、問題はありませんか?」と聞いたら
 「現状では、大した事は無いと思います。被せてあるブリッジを外して見れば分かるのですが、そこまでする必要があるかどうか、もう少し様子を見てみましょう」
との事。

僕って、変な人間・・・・!!

分からない事があると、不安に思ったりして、心配をするが、説明を聞いて現状が分かると、あとは先生の領分だと思ってしまう。
・・・・だって、そこから先は、僕にはどうしようもないし、先生だって一生懸命考えていて下さると思うからである。

それに、心配を沢山したから、早く良くなるっていうものでもないし・・・・

一番イヤなのは、心配ばかりしていると、人生が暗くなっちゃうってえ事!!

・・・・そんなの真っ平だよ・・・・!!

   

   
2000-03-15(水)     自宅

日曜日から、明日までの予定で中野に帰って来ているが、
驚いた事に、庭の木瓜(ぼけ)が満開である。

ヒュッテの庭は、木の芽が動くどころか、未だに全面が 15cm くらいの雪に覆われているって言うのに、こちらはどうだろう・・・・!!
梅は終り、庭のボケは真っ赤に満開。
ダイニング・ルームの窓の下の地面には、家内が手入れをしている草花が青々としているでは御座らぬか・・・・全く、何ンタルチア!!・・・・である。

午後、久方振りに、高円寺の喫茶店「あろうむ」にお茶を飲みに行く。
・・・相変わらずの、居心地のよい可愛らしい店内。
素敵な出窓・・・・
小一時間ほど、ママと駄弁ったあと、自転車で裏通りを通って帰って来たが、東京も見ようによっては、いいトコあるなって・・・・改めて、見直しました。    

   

   
2000-03-16(木)   雨のち小雪    ヒュッテ

中野からヒュッテに戻ってみると、雨が降っていたが、どうだろう・・・・庭は新しい雪に覆われていた。
・・・・これは後で分かった事だが、松原湖高原は昨夜から今朝にかけて 20cm くらいの雪がふったとか・・・・矢張り、東京とは大分違うようである。

夜、寝る前に、外をみたら、いつの間にか雨は雪に変わっていた。
・・・・ヒュッテの春は、もう少し先のようである。

   
 

2000-03-19(日)  曇のち雪    ヒュッテ     L = -4°C, H = 7°C

今日は珍しく、三寅剣(さんいんけん)の見学者 2 組が案内所にやって来た。
・・・・一組は地元、小海中学の昭和 26 年卒業生のクラス会メンバー。
・・・・もう一組は刀剣コレクターの一家だった。

前者のクラス会メンバーは、色々と話しを聞いてみると、僕と同じ学年の人達だったのには、少なからず驚いた次第。
・・・・あの・・・・

   アカイ アカイ アサヒ アサヒ

   コマイヌサン ア コマイヌサン ン

   ヘイタイサン ヘイタイサン チテチテタ トタテテタテタ

   キツネ ネコ コブタ タンポポ ポンプ プカプカドンドン

の国定教科書を使った人達かと思うと、チョット懐かしいような気がした。

  
・・・・もう一組のグループは家族 5 人の刀剣コレクターの一家。
・・・・ご主人が国宝の刀を三本、その他、色々な名刀を集められている・・・・という話し。
日本の各地を回られて、気に入った刀があると、譲って頂いている・・・・と言う事である。
・・・・僕の親父も刀気狂いだったから知っているが・・・・
日本刀というのは、兎に角、手に入れるのにお金がタクサン掛かるもの。
国宝級のものと言ったら、恐らく、億の単位の代物ではないかと思うけど・・・・
・・・・しかも、それを三本も!!
とにかく、このような人に出会ったのは初めての事である。

ところで、
・・・・僕も刀が決して嫌いではないが、何分にも、値段が高いので、集めるなんていう事は、とてもじゃないけど望むべくもない。
僕が持っている日本刀は親父から貰った秀景の脇差と、遺産として受け継いだ、春光の短刀の二振りだけである。

・・・・生前の親父の話しによると、秀景は鎌倉時代末期の古刀だという話しだが、砂鉄で作ったという地金が兎に角美しい。
しっとりとした鈍い輝きが何んとも言えない柔らかい光を放ち、その光の柔かさと言ったら・・・・あの柔らかな和菓子のように、前歯でスンナリと噛みきれるのではないかと思うほどである。

一方の春光の短刀は、鎧通し(よろいどおし)と言われるもので、組打ち戦になったとき、鎧の上から相手を刺し殺すことが出来るように鍛えられた特種な短刀である・・・・
兎に角・・・・皮と漆で分厚く編み固めれた鎧の小枚(こざね)を貫通しやすくするため・・・・だと思うが、刃が両刃(もろば)となっている事がとても面白い。
・・・・この春光は、今まで所有した人達が、大切に取り扱って来たせいだろうか、まだ、研ぎ痩せがしてなくて、姿が美しい短刀である。

・・・・日本刀が好きだった親父は生前、美しい親国貞(おやくにさだ)を筆頭に七本の刀をもっていたが、その中の一本、秀景の脇差しが生前に、親父が他界したおりの遺産相続で、もう一本の春光の短刀が我が家にやって来る事になったのである。
・・・・親父が、大事にしていた刀なので、この二振りの刀は、別段、売る気にもならず我が家の天袋に入っているが・・・・時折りの手入れ時、この二刀を見るたびに、頑固だった親父を思い出し、そこはかとなくほろ苦い思いにかられる昨今である。

ところで
・・・・物を集めるのが面白かった僕は、ご多分に漏れず、切手やコイン、SPレコードに蝶の標本などを集めたものであるが・・・・
集めていくうちに、何故かは分からないけど、そういった物にしがみついている自分に嫌気がさし・・・・とうとう、SPレコード(昭和 10 年くらい迄のシェラック盤 1,100 枚)と、蝶の標本(約 8000 点)を町に寄贈する結果となってしまった。

コレクターの心理と言うのは、とても奇妙なものである。
・・・・集めている時は、兎に角、夢中になり
「あれも欲しい。これも欲しい・・・・!!」
と、考えて、あたりを駆けずり回っていたのであるが、或る程度、集まって来ると、今度は、
「キズを着けないように」
と心配をしたり
「・・・・どうだ、凄いだろう!!」
と他人に対して、誇らかな気持ちをいだいたり
・・・・等々で、段々と気持ちが落ち着かなくなり、最終的には、静かに趣味を楽しむ事が出来なくなった自分に嫌気が指して、とうとう、「町に寄贈」と相成った次第である。

今でも思うが、あの時の爽快感・・・・
今まで自分の誇りにしていた物すべてが・・・・
一瞬にして・・・・それこそ、もう・・・・ホントに、アッと言う間に、跡形も残らず・・・・
・・・あとに、たったの一円のお金すら残らず・・・僕の手許から無くなってしまった・・・
あの時の爽快感と小気味の良さと言ったら無かった!!
・・・・と思っている昨今・・・・!!

寄贈して、ホントに良かった・・・・と思っています。

  
その他の今日の出来事
●午前中に、高原日記・・・・三月の日記のコピーを A子ちゃま宛に発送。
●夕方、稲子の井出幸江さん宅に招かれ、
 沢山のご馳走と大好きな手打ち蕎麦をご馳走になり、午後 10 時帰宅。
 ・・・・幸江さん、どうも有り難うございました・・・・!!

  

  
2000-03-20(月)   雪のち曇     ヒュッテ

   
氷溶け去り、葦は角ぐむ

さては時ぞと、思うあやにく

今日も昨日(きのう)も、雪の空

今日も昨日も、雪の空

  
僕の大好きな「早春譜」の 2 番の歌詞である。

今朝の雪を窓越しに見ていたら、この美しい歌の歌詞を、突然、思い出し
部屋の中で大声で歌い始めた。

ヒュッテは、冬も素晴らしい・・・・

この早春の美しさを誰が知っているだろうか?

まさに、「春は名のみの、風の寒さや・・・・」である。

  

夜、Yoshimi ちゃまからメールが届いていた。

Date: Mon, 20 Mar 2000    14:25:35 +0900 (JST)

 お久しぶりです。
お元気ですか?
暖かくなりましたね。\(^o^)/ 

 家の庭にもいろいろな鳥が遊びにくるようになりました。

でも、からすも来る。
そして私を威嚇するんです。
どうもからすのほうが先に暮らしていて、からすの通り道に私の家が建ったのが不服らしい。
失礼しちゃう。(-_-メ)
でも、大きくて怖いので家の中から悔しがっています。

 明日から雅美さんと旅行に行くの。
「トルコ」だぴょーーーん。
トルコ航空の食器セットをゲットしてきます。
前回飛行機からスプーンを持って帰ってきて現地でフルーツを食べるのに便利だったんだ。(^o^)/

 トルコってどんなとこなんでしょうね。
楽しみでチュ。

 それでは。では。

  
★***♪***♪♪***★***♪♪***♪***★

   にゃんこ & ダネー

★***♪***♪♪***★***♪♪***♪***★

    
   
    

2000-03-21(火)   快晴    ヒュッテ    L = -10°C, H = 7°C 

郵便箱を覗いてみると、3/19 に投函した「 A 子」ちゃま宛に投函した封筒が戻って来ていた。
「何んだろう?」
と思って、手にとって見ると
「切手代が 20 円不足!!」
との事である。

「ありゃ、りゃ、りゃ、りゃ・・・・こりゃあ、いかん! 早速、切手を買って貼らなくちゃあ」
とぼやきながら、切手を売っている喫茶店「樹音」の昭子さんの所に電話をしてみると不在!

(じゃあ、仕様がねえや・・・・町の郵便局まで出掛けるとすっか!)
と思ったが
(待てよ、A子ちゃまの家がある”カギカケ”って、これからパンを買いに行く ”高原のパン屋さん”のすぐ近くじゃないか!!)
・・・・と気が付いて、ゼンリンの戸別地図で調べてみると、何んと、彼女の家は、僕が町に行く時よく利用する山の中の近道と国道 141 号線がぶつかる、とっかかりの角の家ではないか・・・・!!
(なーんだ、あそこの家なら、もう傍を何回も通っているからよく知っているよ)
と、早速、出掛ける事にして、高原のパン屋さんでバゲットを買ったあと、帰りがけに A子ちゃまの家の郵便箱に大型の封筒を投函して、逃げるように帰って来た。

 と、言っても・・・・別に、逃げ出さなくてはいけない理由などは何も無いのだが、強いて、その理由を探すとすれば、ただ、単純に、誰にも見付からないようにして、郵便箱を覗いた彼女を驚かしてみたいという、小さい時からのイタズラ心が、そういう気持ちにさせたのかも知れない。

話は変わるが、僕はよく
「八岳さんって、ホントにイタズラ好きね・・・・!!」
と言われることがある。
・・・・人を苦しめたり、怒らせたりするようなイタズラは余り好きではないが、あとで
「アハハハハ・・・・」
と笑えるようなイタズラなら大好きである。

今夜、彼女が僕の封書を見付けて、ビックリしてくれたら、嬉しいんだけど・・・
そして、中身を見て
「ハハハハハハ・・・・」
って笑いだして呉れたら最高だと思う。

   
   

2000-03-22(水)    快晴      ヒュッテ    L = -7°C, H = 6°C

午後 2 時半。
歯医者さんに出掛けると、A子ちゃまが受付にいた。

診察券を出して、
「コンニチハ、お願いします・・・・」と言うと
A子ちゃまは、診察券を受け取って、手続きを済ませると
「きのうは、どうも有り難う」
と言った後
「はい・・・・」
と言いながら、美しい毛筆で宛名を書いたシックな和封筒を差し出した。

瞬間、その意味が分からなかった僕は、その封筒に掛かれた宛名が自分の名前である事がわかると
「エーッ、本当?」
とビックラ仰天してしまった。

だって、こんな事になるって、全く、想像だにしていなかったからである。

・・・・でも・・・・
それから後の今日の一日は、とても素敵な一日でした。

・・・・・・・
・・・・・・・

 午後 11 時。
 先刻、今日の日記を書き始めた僕は、今日の一日をとても楽しく思いだしていたけど、気が付くと、バインダーのメモ用紙に、こんな散文詩を書き上げていました。

   
  

「 手紙 」

   

歯医者さんで受付を済ませたら

ナースのあい子ちゃまが・・・・

「きのうは、どうも有り難う」と言ったあと

「はい・・・!!」と言って、僕に手紙を渡して呉れました。

   

  

・・・・きのうの事って、何かって言うと

10 日ほど前、僕のホームページの高原日記に

あい子ちゃまの事を書いたけど・・・・(*)

そのページを印字したものを、彼女の家の郵便受けに入れて来た事なんです。

   

    
  
シックな和封筒に入った美しい筆跡の彼女からの手紙

・・・・どうしても、中が見たくなったので

もう一度、受付に行き、小さな声で

「今、ここで読んでいい?」と聞いてみた。

   

   
  
瞬間、言葉少なに・・・・・・・、

「いいわよ・・・・どうぞ・・・・」と・・・・

少し恥ずかしそうに、少女のように言ったあい子ちゃま

僕は、彼女の、この爽やかさが大好きである。

   

   
  
・・・・そのあと、きょう一日、この美しい筆跡の手紙を

少しでも時間があると、何回も読み直した僕。

歯医者さんの待合室でも・・・・

・・・・買物に出掛けたラーチの隣りのアルペンローズでも・・・・

   

   
  
町からの帰り道・・・・・

いつものように、夕方の高原野菜の畑の中で

アイスクリームを食べたあと・・・・

八ヶ岳を眺めながら、この手紙を、もう一回読んじゃったよ。

   

   
  
文中、「これ・・さだまさしさんの大好きな曲。私って最高のロマンチストかな?」

・・・・この個所を読むたびに、僕を爆笑させる彼女の無邪気な素直さ・・・・!!

そう・・・・手紙の中の、爽やかさが忘れられなくて

深夜の、たった今・・・・この行を書きながら、もう一回読んじゃったよ・・・・

   

   

  
匂やかな少女らしさが、沢山残っているあい子ちゃま・・・・

こんな女性がいたらなあ!・・・と、永いこと思い続けて来たような彼女・・・・

!!・・・・困っちゃったな・・・・!!

彼女が大好きになっちゃったら、オレ、どうしよう・・・?

   

   

     
今夜の日記は、これでオシマイです・・・・チョン!!

   

 散文詩「手紙」に戻る。

   

   
2000-03-23(木)   曇のち雨     ヒュッテ    L = -8°C, H = 4°C

 この間の雨で、ヒュッテの近くの雪も大分溶け、かなり春めいて来たと思ったけど、松原湖に降りてみると、ワカサギ釣りこそ出来なくなったが、湖面はまだ全面凍結の状態。

 ・・・・春はまだまだ先なのかなあ?

どう?・・・・この寒々とした風景は?

 ・・・・話は変わって、料理の話題・・・・
 今朝の NHK の「常備料理」の番組で、ギタリスト、クロード・チアリの娘さんのクリステル・チアリが出演し、クロード家でいつも食べている焼き茄子のオリーブ・オイル・ペーストの紹介があった。
 ・・・・見ている内に、とても食べてみくなったので、生まれて初めて、テレビで紹介された料理を、今夜の晩ご飯のあとに作ってみた。

 一時間ほど掛かって、どうやらこうやら出来上がったので、早速クラッカーに載せて食べてみたら、とても美味しかった。

 やってみると、僕にだって出来るじゃないか?

 明日の朝の朝食は、バゲットにバターじゃなくって、バゲットに今日作ったペーストで食べてみよう。

 でも、僕が作ったペーストとクロード家のペーストでは、味が同じだろうか?

 クロード家のペーストをとても食べて見たいと思う。

    

 先刻、家の外に出てみたら雨が降っていた。
 ・・・・道理で、暖いと思ったよ・・・・!!


 そのあとの・・・・ついさっき、今日の日記をアップロードしたあと、自分のホームページにアクセスして、間違いなくアップロードされているかどうか調べたんだけど、その時、アクセス・カウンターを覗いて見たら、何んと、カウンターの数は丁度 9000 でした。
 全く「へえ・・・・!!」である。

   

   
2000-03-25(土)   雪のち曇     ヒュッテ   L = -6°C,   H = 2°C

 朝、起きるとカーテンの外がやけに明るい。
 どうしたのかと思って、カーテンを開けてみると、
 「また、雪だあ・・・・!!」

 ・・・・本当なら、ユックリと雪景色を撮影して、ホームページに載せたいのだが、今朝は歯医者さんの予約が 9 時に入っているので、そんな悠長な事は言っていられない。
 ・・・・仕方なく、把手(とって)をクルクルと回して、洗面所のブラインダ・ガラスを開き、網戸越しに薪小屋と隣の手作りのログハウスに降る雪景色を撮影した。

 

ああ、また雪だ・・・雪!!

全く・・・・早春賦ではないけれど

春と聞かねば知らでありしを

聞けばせかるる胸の想いを 

・・・・である!!!

   

   

2000-03-26(日)  雪のち晴    ヒュッテ    L = -6°C,  H = 2°C

今年は、一体、どうなっちゃっているんだろう?

驚いた事に、今朝もまた雪だよ・・・・雪!!

二階の寝室の窓から外を覗くと、きのうの朝より深い雪!!

・・・・ウレシクなって撮ったのが、下の写真。

  
 ・・・・この写真は寝室の北側の窓を開けると見える、窓のすぐ傍にある白樺の木とその向こうに見える薪小屋、さらにそう向こうの落葉松林の奥の道路の写真です。

 ・・・・この素晴らしい景色は、本当にお金では買えません!!

 僕は、この松原湖高原が本当に大好きです・・・・!!!!!

  

 話は変わりますが、受付のお手伝いしている観光協会に新しいパソコンがやって来ました。・・・・もともと、数学とパソコンが大好きな僕の事・・・・とても、嬉しくて仕方がありません。・・・・きのうも、何時間も取り扱い説明書を読んでいました。
 取説を読んでいるだけでも、何んとなくウキウキしてしまいます。

  

  
2000-03-31(金)    晴     ヒュッテ

 午前 08:30。
 歯医者さんに出掛け、治療をして貰う。
 ・・・・今月中旬、右下の奥から三番目の臼歯の神経を抜いてから、歯の痛みが無くなり、物を噛むことが出来るようになってきた。・・・・とても嬉しい!!

 ・・・・診療を終り・・・・会計をして下さった看護婦さんに、A子ちゃま宛の手紙を預け、彼女に渡して下さいとお願いをして帰宅。
 ・・・・今までアップロードしてあった散文詩「手紙」に何カ所か気に入らない個所があり、あちこちに手を加えた最新版のプリント・アウトを A子ちゃまに渡したかったからである。

 ・・・・ところが、どうでしょう?
 午後になると、今度は入れ違いに、 29 日付けの消印のある A子ちゃまから手紙が届いたではありませんか?
 「ウワーイ!!」
 ・・・・嬉しくなって、早速封を切った僕だけど、途中まで読み進んだところで、思わず噴き出して仕舞いました。
 そこには、こんな文章が書かれていたからです。

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・
 今日は幸福を呼ぶ燕を見て、アンデルセンの童話を思い出して一寸文学的に思いを駆せたのに、今夜は家へ帰って寝ころんでクレヨンしんちゃんの何巻を見ようかな・・・・なんて又々不思議な自分がいて・・・・。 解らない自分がいます。
 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ちょっと文学的になったかと思うと、ありのままの日々の生活や普段着の自分を素直に表現する A子ちゃま・・・・僕はそんな彼女が大好きである。
 ・・・・と言うより、少女のような飾らないままの自分を素直に表現する彼女の爽やかさがとても好きなのかも知れない。

 そう言えば、Keika も、Masami も、マリも、もう一人のマリも、ひろみちゃまも・・・・それから利恵も・・・・それから、つい最近知り合った美豊子ちゃまも・・・・それから・・・・それから・・・・等々・・・・皆、兎に角、少女のように素直で爽やかである。
 僕は、どうして、こう素敵な女性の友達(?)に恵まれているのだろう?

 話は、つい横道にそれて仕舞ったが、A子ちゃまの手紙には、僕が生まれてから初めて貰った絵手紙が同封されていました。
 ・・・・とても嬉しい。
 ・・・・僕は、今夕東京に帰るけど、今度こちらに来るまでに、額縁に入れてヒュッテの壁にでも飾ることにしましょう。
 A子ちゃま、どうも有り難う!!

 

 

     
      

    

 フロントページに戻る