No. 61 三寒四温

  
    
 休みの日の朝。

 ガラス戸から流れ込む陽の光がとても暖かくて

 ストーブを消して、ガラス戸を開けた。

 昨日の朝は 15cm の積雪があったのに、

 今日はこの暖かさだ・・・・・・・

   

   
  
 天気予報によると

 この暖かさは明日も続くという。

 三寒四温とは、丁度、こんな日々の事を言うのだろう。

    

   
 今、この行を書いている雑記帳から庭に目を移すと

 庭には、まだ一面に 40cm 程の雪。

 真っ白い雪に、強い午前の光が当たり

 まぶしさに思わず目を細めてしまう。

   

    
 ・・・・今朝は、ベランダのヒマワリの種はヒッソリと静か。

 小鳥達は、まだ一羽もやってきていない。

 ・・・・と言うよりも

 あの早起きの小鳥達のことだ・・・・

 僕が朝寝坊をしている間に

 カラッポの餌鉢に、誰もヒマワリの種をいれて呉れないのを知って

 何処かに飛び去ってしまったのかも知れない。

    

   
 ダイニングテーブルに肘をついた左手の上にアゴを載せ

 右手のシャープペンシルで、この詩を書いている僕。

 ・・・・壁の鳩時計が秒を刻む音が静けさを引き立てている。

 去年の誕生日に家内からプレゼントされた若い女性の油絵も

 ベイウィンドウに飾られたファルマンの複葉機も

 いつものままの、長閑な(のどかな)佇まいを見せている。

   

   
 ふと思い出して、冷めた紅茶を口に運ぶ

 ・・・・カップをソーサーに戻した時の、瀬戸物とスプーンが触れあう音

 目の前には、朝食のバゲットを温めたトースターがあり

 庭の白い雪の向こうには、葉を落とした雑木林が黒々と静かに立っている。

  

   
 ふと、黒い影が目の前を横切った。

 気が付くと、先刻ヒマワリの種を入れてやった餌鉢に

 小鳥達が次々とやって来ている。

 ヒガラ、カワラヒワ、ゴジュウカラ、コガラ、ウソ、シジュウカラ・・・・

 雪解けはまだまだずっと先だけど

 春は確実に、すぐ近くまでやって来ている。

   

 「でも、かなうことなら・・・春よ、出来るだけユックリとやって来て呉れ!」

   
  
 心ならずも、こう僕は心の中で呟いてしまった。

 だって・・・・今日のような素晴らしい日々を

 ・・・・もっともっと心ゆく迄、味わいたいんだもの・・・・

   

    

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