八千穂村にて

(2000-03-08)   

  
   
山を降り、歯医者さんに行ったあと

ホッとして、八千穂村の「ハーモナイズ」に出掛けた。

暖かい店内に入り、いつもの席に坐ったら

「いつものでいいですか・・・・?」

と言って、シックな黒いセーターを来たマスターが

大好きなミルクティーを用意してくれた。

   

   
静かな音楽を耳にしながら

透き通ったエスペラント語の初歩の練習問題を

手になじんだ万年筆でノートに書き留めて行く。

Kiun esperantistoj vi konas en nia urbo ?

Mi konas k-dojn ・・・・・・

僕は規則正しく美しい、この国際補語が大好きである。

   

   
しばらく練習問題をやっていたが

気持ちのよい部屋の暖かさに

いつの間にか、うたた寝をしてしまった。

どの位の時間が経ったことだろう?

・・・・・・・

女性の話し声に、ふと目を覚ました。

   

   
・・・・・気が付くと、大きな窓のそとの

夕暮れの空に本格的な雪・・・・

葉の落ちた遠くの樹々の黒い幹が

降りしきる雪の中で、墨絵のように霞んでいる。

この店に入って来た時には

青空に明るい太陽がさんさんと輝いていたのに・・・・

   

   
もう三月に入り

少しづつ、春めいて来たあたりの景色も

あっと言う間に、真冬の景色に戻ってしまった。

向かいのデーブルに坐って話している

先刻の二人の女性の話し声が眠たげに耳にとどき

静かなピアノの BGM が室内の暖かさを引き立てている

  

   
さっき迄、冬の斜めの陽射しを浴びて

あんなにも金色に輝いていた庭の芝生が

サラサラとした細かい雪に覆われて

いつの間にか真っ白・・・・・!!

・・・・気が付くと、僕のエスペラント語はそっちのけ、

右手の万年筆は、この行(ぎょう)を書いていた・・・・

  

    

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