Fetch

(1999-11-22)   

  

初冬の午前。 

朝食後の紅茶をユックリと楽しみながら

部屋の中に流れるクロード・チアリのギターに

静かに耳を傾けていた。

  

食卓の上では、冬の午前の低い陽光が

マグカップの影を長くテーブルの上に投げ掛け

庭の小鳥の餌台の上では

今日もリスがヒマワリの種を食べている。

  

楽しかった、ここ数日間のメールのやり取り

・・・・僕はフト、基子ちゃまの事を思い出していた

基子ちゃまって、一体、どんな女性なのだろう?

・・・・気が付くと、僕は憧れに似た気持ちで彼女の事を考えていた。

  

はじめはホームページのアップロードが出来なくて

新しく買った Fetch の質問のメールをだしていただけだったのに

一生懸命に応対して呉れる彼女の心が

僕には、とても爽やかだった。

  

「何故なの?・・・・そんなに一生懸命に答えを書いてくれるなんて・・・・!!」

僕は何回こう自問したことだろう・・・・?

「仕事のメールなのだから・・・・

もっと、事務的な返事でもいいのにサ・・・・」と。

  

僕は、彼女の顔も、年齢(とし)も、過去も知らない・・・・。

・・・・でも、或る日のメールの中で

僕は、確かに、彼女の息遣いと、髪の毛がゆれるのを、

・・・・そして、心臓の鼓動を聞いたような気がする。

  

今、過ぎ去った、ここ数日間の事を振り返ると

僕は、毎日の様に、この素敵な女性と

会っていた様なきがしてならない。

・・・・それ程、彼女の清々しさは、僕には強烈だった。

  

僕が生まれてから、初めて経験した

とても素晴らしかった、数日間の思い出

こんなにも純真になれる事が、これからの人生にあるだろうか?

・・・そう思うと、ほんのチョッピリだけど・・・とても淋しい。

  

「基子ちゃま・・・・貴女って、どうして、そんなに優しかったの?」

こう呟(つぶや)いたら、ふと、紅茶が冷めているのに気が付いた。

部屋の中では、相変わらず、クロード・チアリのギターの音が静かに流れ

初冬の陽射しは、今でもユックリとテーブルの上に小さな日溜まりを作っている。

  

気が付くと、僕は小さな声で呟いていた。

「基子ちゃま・・・・

この数日の間の爽やかな思い出を有り難う。

・・・・僕は、貴女が大好きです・・・・!!」

  

     

  

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