往く夏  

  (1999-09-06)   

  

あんなにも光り輝いていた夏が

    気が付くと、すっかりと疲れ切っていた。

夏の盛りには、狂おしい程に咲き誇っていたアザミの花も

    いつの間にか茶色のイガグリ坊主を並べ

・・・・今でも咲き残っている紫色の花冠では

    疲れ切ったイチモンジセセリが物憂げに蜜を吸っている。

  

  

静かで疲れた晩夏のヒュッテの庭には

    ケニー・ドリュー・トリオが殊の外よく似合う

美しく流れるようなピアノとベースとドラムスを聴いていると

    もう本当に何も考える気がしなくなってしまう。

でも・・・・とても不思議な事に・・・・この古いジャズは

    僕が何をしていても、決して邪魔をしないのだ。

  

  

気が付くと、あたりはスッカリと秋景色

    ・・・・いつの間にか、淡い色のコスモスが風に揺れている。

本当は、まだまだ夏にいて欲しい、と

    こんなにも、こんなにも願っている僕なのに・・・・

儚い(はかない)くらいに透き通ったジャズを聴いていたら

    往く夏も、また素晴らしいナ・・・・と、ふと思ってしまっていた。

  

  

  

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