晩  夏

(1999-08-25)  

  

久方振りの上天気。

庭のハンノキの遥か彼方には

真っ青な空に高積雲が浮かび

乾ききったベランダに降り注ぐ淡い光りには

もうスッカリと晩夏の匂いが漂っている。

  

  

久方振りに聴くモーツァルト。

明るく躍動的な「リンツ」の爽やかさが

今朝の高原の跳ね返るような空気に

どこまでも、どこまでも澄み切って

キラキラと煌(きら)めくような眩(まぶ)しさを添える。

  

  

緑色の陽の光を跳ね返すハンノキの枝先には

音もなく滑るようにオオミスジが舞い

窓の近くでは・・・・・・・ 

ベランダに黒い影を落として

オオウラギンスジヒョウモンが元気よく飛んでいる。

  

  

遠くの方で女性の話し声が聞こえる。

話しの内容は全く聞き取れないけど

その弾(は)じけるような声の響きが

往く夏を惜しむかのように

淡い空色の名残をあたりに漂わせる。

  

  

・・・・間もなくコスモスが咲いて、爽やかな風が高原をかすめると

あたりは一面の秋になるだろう。

そのせいだろうか・・・・たった今、往く夏を惜しむかのように

緑色の目玉を光らせたオニヤンマが

弱気で及び腰の往く夏を追い掛けて行った。

  

  

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