1998-10-13

薪割りのオガクズ

  

  

雨の午後、ストーブの脇の昼寝から目を覚まし

外出前のヒゲを剃りながら

洗面所のブラインド・ガラスを開けてみた。

  

  

    家の北側のカラマツ林の向こうに

    隣家の手作りのログハウスが見える。

    その古びた佇(たたず)まいがとても懐かしい。

  

  

家の中は、こんなにも温かいのに

ブラインドから流れ込む風は

冬でもないのに、こんなにも冷たい。

  

  

    昼寝の後の、まどろみ勝ちな僕の心を

    清々(すがすが)しくて新鮮なオガクズの匂いが

    とても爽やかに目覚めさせて呉れた。

  

  

きのう切った新しい薪のオガクズと

けさ降った高原の雨に濡れた落葉の

しっとりとブレンドされた匂いはヒュッテの香水だ

  

  

    雨の音が一層の静けさを誘う午後。

    ヒゲを剃るジョリジョリという音と

    耳の奥で鳴る耳鳴りも、今日はとても静かだ。

  

  

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