1998-08-25

夏の終わりに

     

あんなにも人々で賑わっていた高原も

    一陣の秋風と共に静かになってしまった

あんなにも狂おしく咲き誇っていたスイセンノウも

    気が付くと、淋しげな萩の花に生まれ変わっていた

     

     

ギラギラと、聳え(そびえ)立っていた真夏の峰々も

    いつの間にか、澄みきった透明な尾根となり

昼下がりの爽やかな高原の草原(くさはら)に立つと

    カラリと晴れた初秋の少年の日々が懐かしい

     

     

ああ、遠く遥かな麦わら帽子の少年の日々よ

九月の新学期が近づき

    遠くの家の庭で眠たげになく

    ただ一匹のツクツクホウシの声を耳にしながら

    泣き泣き取り組んだ夏休みの宿題

     

     

あのコスモスにも似た

    淡い水彩画のような少年の日々は

    どこに行ってしまったのだろう?

     

     

あの秋風にも似て

    何処までも澄みきっていた少年の日々は

    一体、どこに行ってしまったのだろう?

     

     

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