1998-08-06  

遠雷

 

 遥かな谷で遠雷の音がする。

 夕暮れの湿った重い空気。

 ひと雨がサッと来て

 けだるく澱(よど)んだ空気を

 サッパリと洗い流してくれたらいいのに。

 

 

        ポツリと右肩で雨の音がすると

        たちまち林全体が雨につつまれた。

        サワサワと樹々(きぎ)の葉に鳴る雨。

        むっとした湯気が地面から立ち昇り

        懐かしい土の匂いが鼻をついた。

 

 

 駈けって家に帰ってからも

 二階の窓のガラス戸越しに

 白樺とハンノキと隣家のベランダに降る

 煙ぶるような夕暮れの雨を

 いつ迄も、いつ迄も、眺めていた。

 

 

        さっきまで鳴いていたカッコーも

        いつの間にか声をひそめてしまった。

        静かな夕方・・・・・・・・

        もう、三日も家内から何んの連絡もない。

        こんなにも、こんなにも、愛しているのに!!

 

 


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