1998-04-08  

春の雨


 雨の夕方。

 町へ買い物に行った帰り道、広い畑の真ん中で

 農道の脇に車を止めてみた。

 暖かい道路からは湯気が立ち

 遠くの農家は煙霧にむせていた。

 

 車の椅子の背もたれに頭をのせ

 目をつぶって、耳を澄ますと

 額(ひたい)のすぐ上の屋根で鳴っている雨の音が

 頭の芯まで気持ち良く沁み込んでくる。

 目の裏の痛い疲れを冷ますように。

 

 目覚めないように! この心地よい気だるさが・・・・

 そして、いつまでも聞いていたい・・・・この温かい雨音を!

 冷たい雨の高原の、畑の真ん中に独りでいると

 本当はとても淋しいはずなのに

 どうして、こんなに幸せなのだろう!

 

 いつまでも、いつまでも、このままで居たい・・・・。

 今夜は、このまま野宿しようか?

 シュラフを持って来ればよかったのに・・・・

 夜気が冷えなければ気持ちいいのに・・・・

 雨がいつまでも降っていれば、幸せなのに・・・・!!

 

 「でも、どうして、幸せって、いつまでも続かないのだろう」

 

 

 目次ページに戻る