ふと CD が終って、あたりが急に静かになった。ガラス窓の外を覗くと庭には春の陽射しが一杯・・・・・・。
・・・・・・でも・・・・・・突然の静寂の中に放り出されて
僕は戸惑いながら、空を見上げる・・・・・・
美しい深い藍色の空に
今日も爽やかな雲が流れる。
庭の周囲のシラカバ林の
浅黄色(あさぎいろ)の新芽は飽くまでも淡く軟らかい。
この静寂の中にいると
一瞬、僕は、生きているってイイナって思ってしまう・・・・・・
・・・・・・でも、ボンヤリと辺りの景色を眺めていたら
「今、僕の前に家内がいたらいいのにナ!?」と、思ってしまった。
高原の朝の素晴らしい朝食の・・・・・・たった今の、この瞬間に
もし・・・・・・「ハイ!」って言って、家内が
大きなマグカップに熱い紅茶を
なみなみと注いでくれたら、どんなに幸せだろう・・・・・・!!
・・・・・・って、フトおもってしまう・・・・・・!!
家内が僕の事を、どう思っているか分からないけど・・・・・・
・・・・・・どうも、僕は家内が大好きらしい・・・・・・!!
時々は、言葉の順序の掛け違いから
小さな喧嘩をすることはあるけれど・・・・・・
色々と考えてみると・・・・・・
家内は、どうも、僕がこの世の中で一番好きな女らしい・・・・・・
或る時・・・・・・
爽やかな音楽が流れる都内の喫茶店で
独りの旧友が
「おい、お前・・・・・・!! お前はいつも能天気な顔をしているけれど、
人生の一番の幸せって、何んだと思う・・・・・・? 俺には、どうもよく分からネエ!!」
と言った事がある。
その時・・・・・・僕が・・・・・・この気位の高い友人を・・・・・・
(何ンとかして、笑わしてやろう・・・・・・!!) と思って、
・・・・・・口からでまかせに・・・・・・
「一番好きな女性と、何もかも忘れて・・・・・・
夢中になってエッチが出来る事じゃないかのかナ・・・・・・?!」
・・・・・・って言ったら
・・・・・・その地位も、名誉も、冨も手中に収めている男が、笑うどころか
(ウ〜〜ン!!)と唸ったあと・・・・・・
「お前っていう奴は、ホントに幸せな男だな・・・・・・!!」
と、沁み々々と言ったので、ビックリしたことがある・・・・・・。
気が付くと、朝食はいつもの通りにソッチのけ・・・・・・
紅茶も冷めてしまったし、いつの間にか CD も止まっていた。
そして・・・・・・ガラス戸の外の明るい芝生の上には
今日も又、年を越したスジボソヤマキチョウがユックリと飛んでいき
芝生の間から、やっと顔を出したタンポポに
明るい春の陽光が、まぶしく照り返っている。
素晴らしい春・・・・・・明るい春・・・・・・
そんな事を考えながら、この詩を書いていたら
いつの間にか、心があらわれて
一段と、今の春が美しく輝き出していた。
・・・・・・そうだ、今夜にでも
東京の家内に、「元気・・・・・・?」って、
電話をいれてみることにしよう・・・・・・・カナ?
(2004-09-08 掲載)