83. 居間にて
2003-02-03
午前10時。
この間から、何んとなく風邪気味だったせいだろうか
朝食のあと気が付いたら、ひとり居間でボンヤリと突っ立っていた。
いつもだったら、次から次へと・・・・・・
やらなくちゃいけない事が頭に浮かぶのに
今日は駄目・・・・・・!
頭の中に、靄(もや)が掛かったみたいに
考えがまとまらないし
体中に力が入らないでだるく疲れている
そばにあった籐椅子に腰を下ろし
大きな欠伸(あくび)を一つファ〜ッとすると
アッと言う間に眠ってしまったようである
どの位、眠っていたのだろうか
目を覚ますと・・・・・・・
飛び込んで来たのはいつもの居間の風景
ビビンガの木のテーブルがあって
オリズルランやシンビジュウムやチャランの緑があって
ナイトテーブルに載った陶器の電気スタンドの傘が懐かしい
気が付くと・・・・・・
隣のダイニングからビートルズの音楽が聞こえて来る・・・・・・
CDかと思って、ボンヤリと聞くともなく聞いていると
突然、都内の交通情報が流れ出したので
「おや? これはラジオだよ・・・・・・」と気が付いた
(そうだ、さっき家内が油絵をかいていたっけ・・・・?)
家内が油彩を画く時、
よくラジオをかけているのを思い出した僕は
先刻、彼女がダイニングテーブルの上に
ドッサリと油彩絵の具のチューブを運んでいたのを思い出した
・・・・・・そして・・・・・・思い出したように
大きく息を吸い込んで、画材の匂いを嗅ぎとろうとした
・・・・・・そんなことは出来る筈もないのに・・・・・・
こうして、静かにラジオを聞いていると
とても素朴で単純なこの雰囲気を
ふと・・・・・・「いいな!」・・・・・・と思ってしまう
庭に面した大きなガラス戸に掛かった
昔ながらの白いレースのカーテンに
淡く斜めに差し込んでいる朝の陽光
いつも見慣れた朝のひとコマではあるけれど
良く見ると・・・・・・
今朝の光は、今までに見た事のない
新しい朝の光であることに、ふと、気が付いた・・・・・・
「そうか・・・・今朝は今迄になかった新しい朝だったんだ!」
そう気が付いたトタン、僕は心の中で小さく小さく呟いていた
「いいなあ!・・・・・・また、新しい朝が来たんだ!」
「・・・・・・そして、又・・・・・・新しい僕がいるんだ!」
って・・・・
(2004-02-05 掲載)