2001-08-19

No. 70 晩夏の薪割り

   



晩夏のヒュッテに乾いた薪割りの音が響く。

   

   

ふと、薪割りの手を止めると・・・・・・・・

眠くなるように、ひっそりとした静かな午後。

・・・・・・・見上げると、ミズナラの林の上に

夏の終わりの入道雲が淋しげに光っていた。

    

   

きらめくような美しい高原の夏も

まぶしく照り返していた白樺林の緑の葉も

今では、何となく淋しげで・・・・・・力が無い。

遠くの家のラジオから流れて来る

高校野球のアナウンサーの声も

あっけらかんとして、ひときわ静かな感じがする・・・・・・・

    

     

割った薪をネコ車で運び

コツコツと薪小屋に積み上げていると・・・・・・・

・・・・・・その間延びした音が

咽び泣き出したくなるような幸せで僕を包んで呉れる。

    

    

・・・・・・・不意に気が付いて

僕は静かに静かに

薪を積み始めた。

    

    

・・・・・・・乱暴に体を動かすと

このひとときの幸せが

シャボン玉のように

壊れてしまいそうな気がしたからかも知れない・・・・・・・