梅雨(つゆ)の夜

(1999-06-12 ヒュッテにて) 

     

梅雨の夜・・・・・・今まで見ていたテレビを消したら

ヒュッテの中が急に静かになった。

秘(ひめ)やかな雨の音を聞いていると

・・・・・・もう何もしたくなくなって

タダ、タダ・・・・・・ボンヤリとしている僕。 

     

     

ふと、我にかえって・・・・・・

真っ暗な庭先を覗き込んだら

何匹かの小さな蛾が

ガラス戸の外側に

物憂げにとまっていた。

   

     

ガス入り電球の

頼り無げな灯りに照らされて

翅(はね)の裏側を見せている

メイガやヒトリガの仲間達。

その眠たげな姿がとてもキレイだ。

    

     

・・・・・・何を考えるのも面倒臭くて

心うつろに

けだるげな蛾を見詰めていたら

放心状態の自分の姿が

夜のガラス戸に写っていた。

   

    

もう、梅雨(つゆ)の夜は

とうの昔に暮れてはいるが

真夜中までは、まだまだ時間がある。

しんしんと更けて行く夜・・・・・・

・・・・・・その夜さえも、アクビをしているようだ。

    

    

なぜ、夜はこんなに美しく

優しく僕を慰めて呉れるのだろう?

・・・・・・こんな事を考えていたら

星明りもない庭の闇が

とても素敵に思われた。

    

(2004-04-18 初掲載)