五 月 の 雨

(1999-05-04)  

雨の午前中

傘をさして、今日も高原美術館まで散歩に出掛けた。

5月のゴールデンウィークだと言うのに

晩秋のように降る、冷たく湿った雨が、心に重くのしかかる。

    

     
連休のためだろうか・・・・・・?

普段は殆ど止まっていない自動車が

別荘地のアチコチに、雨に震えながら止まっている

・・・・・・でも、歩いているのはコートの襟を立てた僕ひとりだけ。

    

    
吐く息も白い、この寒さ・・・・・・

いつもなら、帰り道の正面に見える天狗岳も

今日は、霧雨の中にスッポリとかくれたまま・・・・・・。

あたり一面のカラマツのかすかな芽吹きが、今日は一段と寒さを引き立てている。

    

     
雨の日の林の奥は淋しげで暗い・・・・・・

・・・・・・僕の足音に驚いたのだろうか?

一羽のキビタキがチチッと鳴いて飛び去った。

背中の鮮やかな黄色をきらめかせて・・・・・・

     

     
雨が大好きなぼくだけど・・・・・・

こんな雨の日は、とても淋しくなってしまう。

「・・・・・・そうだ、早く家に帰って、ストーヴで暖まろう・・・・・・!!」

ホントに珍しくこう言って、大股で歩き始めた。

     

     
家に戻っても、大した事は何もしない。

ストーヴのそばで、複雑なロシア語の動詞の変化を憶えたり

口の中でエスペラント語のテキストを、ブツブツと呟きながら

紙の上に、一語一語ていねいに書き取っているだけ。

     

    
それでも、とても幸せ・・・・・・!!

ストーヴが眠たげに呟き

部屋の中にタルレガのアデリータが流れ

ベランダに冷たい雨がチョボチョボと降っていると・・・・・・!!

     

(2002-10-22 掲載)